矢作川研究所日記

2024/03/02

第19回矢作川学校ミニシンポジウムを開催しました!

矢作川学校ミニシンポジウムは今年度で19回目となりました。会場には34名、リモートには7名の方々にご参加いただき、大学生や大学院生による10題の研究発表と意見交換を行いました。今回は中・高校生の参加はなく、幅広い層の発表とならず残念でした。一方で、矢作川を熟知されている年配の方々からは多くの質問や意見が寄せられ、まさしく世代間の交流の場となりました。これまでのミニシンポジウムでは、若い人たちの意見交換が乏しく、彼らの発言をいかに促すかが、課題の1つでした。驚いたことに、今回は、積極的な質問が飛び交う場面もあり、活気が出てうれしく思いました。
 主催側にいる私たちも初めて人前で研究発表した時を振り返ると、緊張と答えに窮する質問がでたら、どうしょうという不安で一杯だったことを思い出します。その後、年を重ね発表を重ねるうちに、不安よりも自分の研究に対する意見を求める気持ちが大きくなりました。若い人の発言を促すには、会場の雰囲気を柔らかくすることが必要だと感じています。ミニシンポジウムは、学会発表のような堅苦しいものではなく、仲間同士が雑談する時のように、おやつをつまみながら、気軽に意見し合えるサロン的な楽しい会にしていきたいと思っています。今回はその試みの第一歩として、参加者全員で集合写真の撮影を行いました。(内田朝子)




2024/02/19

矢作川研究所のDX 顕微鏡カメラ来たる!

顕微鏡カメラで見せてもらいました


先日,念願だった生物顕微鏡用のカメラが届きました.
早速,研究員の内田さんと白金さんがカメラ一式を顕微鏡に取り付け,研究所内のモニターを仮移動させてセット完了.

藻類のサンプルを見せてもらうと…きれいな珪藻の画像がモニターに映りました.
いつも,内田さんが熱心に顕微鏡をのぞいているのを見ていましたが,顕微鏡越しにどんな世界が広がっているかまでは知りませんでした.矢作川研究所の所報(内田・洲澤2018,矢作川研究22号)で珪藻の写真を見たことはありましたが,そちらは白黒の写真だったので,モニターに映る鮮やかな珪藻の彩りに魅せられました.顕微鏡カメラの利用は検鏡作業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の一つと言えるもので,研究成果の高度化に役立つことは間違いありません.

それだけでなく,市民の方に付着藻類の世界を見てもらうのにも活用したいと内田さんは言います.(矢作川研究所の季刊誌RIOの次号[2024年春号]の記事も参照下さい)地元の川でとれた付着藻類などのサンプルを持ち込んでもらい,どのような種類がいるのかを確認してもらえたら,付着藻類への理解が深まると期待されます.一般には,付着藻類というと石についた緑や茶色っぽいものくらいの認識しかされませんが,それぞれの環境にあった種類が存在し,多様な世界を形成しているようです.

皆さんも地元の「おらが川」で付着藻類を採集して,矢作川研究所に持ち込んで,顕微鏡カメラで見てみませんか?


鮮明な「付着藻類の世界」!



2024/02/10

5年振りにシンポジウムを対面開催しました

 今回のシンポジウムは「市民連携で進める川づくり」をテーマにしました。
 基調講演では、全国の河川市民団体に関する研究や川を活かしたまちづくりの事例について坂本貴啓先生(金沢大学)にお話しをいただきました。その後のディスカッションでは、坂本先生に加えて、市民の立場から岩本川創遊会の小野内会長、行政の立場から豊田市河川課の須藤課長、そして矢作川研究所の山本の4人で、水辺の整備や川づくりへの市民の関わり方、活動の継続に関するヒントや行政の課題などについて話しました。短い時間でしたが、市内で行われている様々な活動の発展や継続のきっかけになれば幸いです。
 対面での開催は実に5年振りだったため、来場していただけるか不安でしたが、水辺愛護会の皆さんやふるさとの川づくりに関わっている皆さんなど、日頃から矢作川研究所がお世話になっている方々がお越しくださったのに加えて、シンポジウム初参加という一般の方々の、合わせて60名の方に参加していただきました。(山本大輔)




2024/01/27

太田川(だいたがわ)河川愛護会の2回目のワークショップを行いました

寄せられた意見を整理し太田川の将来像について考えました


太田川の水生生物について紹介しました

太田川河川愛護会の願いや想いを込めた「管理活動計画図」を作成するための2回目のワークショップを大内町公民館で行いました(進行役は、洲﨑主任研究員)。平松会長をはじめ会員5名の方にご参加いただきました。

1回目のワークショップは昨年11月25日に行われ、太田川河川愛護会の活動地の特性を反映した様々な意見が寄せられました(以前の研究所日記の報告を参照下さい)。今回はそれらの意見などを基にして、「これからの目標と活動方法」について検討し、太田川河川愛護会の活動地である太田川の未来・将来像を語る回となりました。

「管理活動計画図」にはテーマとなるキャッチコピーが添えられるのですが、その案として「生きものにも人にも優しい川づくり」や「豊かな自然のある川を地域の宝に」などが挙げられました。小さい頃から地元の川に親しんできた会員の皆さんならではの自然観が込められているなあと、興味深く聞きました。

今後の水辺愛護活動については、「豊かな自然や多様な生きものを身近に感じられる太田川を地域の財産として守って行きたい」そして、「地域の子どもたちに遊びに来てほしい」という願いを軸として、それを実現するためのゾーニングや具体的な管理方法(例:ホタルに配慮した一時的な高刈り)などについても議論が盛り上がりました。太田川河川愛護会ならではの「管理活動計画図」を作成するための素材がいっぱい集まりました。今後の管理活動計画図の完成が楽しみです。

(余談)
ワークショップ終了後、参加者の方から「どんな想いで水辺愛護活動に取り組み始めたかを再認識することができた」とのご感想を頂きました。水辺愛護活動の多くは草刈りで地道な作業といえますが、その活動を始めた想いや願いが継続的な活動を支える大きな原動力となっているはずです。今回のようなワークショップが、その初心を再確認する機会にもなったとするならば、大変嬉しく思います。

「管理活動計画図」の作成は今回の太田川河川愛護会で7つ目となります。管理活動計画図を作成したいという水辺愛護会がありましたら、矢作川研究所にお声がけいただければと思います。

                                                                                                    報告:小野田 幸生



2023/12/28

アユの流下仔魚調査を行いました

流下仔魚に見入る調査員たち

「草木も眠る丑三つ時…」とは夏の怪談のお話ですが、今回は冬のお話です。

場所は志貴野橋、河口から11.6kmの場所でアユの流下仔魚の調査を行いました。通常は,流下仔魚が多く観察される11月中旬に行うことが多いのですが、今回はなんと年末に実施しました(しかも,流下仔魚が捕れやすい時間帯の深夜の調査となりました)。

というのも…どうも、この時期に孵化したアユが矢作川で産卵に参加しているようなのです。そのアユは矢作川生まれなのでしょうか?ただし,この時期にアユの流下仔魚について調査した事例は(ほとんど)見当たりません。

そこで、実際に調べてみようということになりました。流下仔魚のピーク(11月中旬くらい)は過ぎているので、流下仔魚は見つからないか、見つかってもかなり少ないことが予想されます。

実際、現場では流下仔魚らしきものはなかなか見つけられません。そんな中、一つのサンプル瓶の中にそれらしきものが! (その後、もう一つのサンプルでも流下仔魚が現地で確認されました)調査に参加した皆が大喜びです!

一緒に採集された枯れ葉などについていることもあるようで、ソーティングすれば、さらに見つかる可能性もあります。今後の分析の結果が楽しみです。
                                          山本大輔