矢作川研究所日記

2016/11/15

セミナーを開催しました(中村太士氏)

「札内川ダムフラッシュ放流−その目的、効果、課題」北海道大学大学院農学研究院教授 中村太士氏(2016/11/15)

 北海道札内川ダムでは、フラッシュ放流による礫河原の再生が行われています。今回のセミナーでは、札内川技術検討会の委員長を務められている中村先生に、その取組についてご紹介頂きました。
 石礫河川における礫河原の減少と樹林化は全国的な問題になっています。札内川では北海道の準絶滅危惧種ケショウヤナギの幼木が育たない、チドリ類やカワラバッタ等昆虫類のすみかが奪われるなどの現象が見られ、フラッシュ放流による環境改善が提案されました。ヤナギ類の種子散布の時期に合わせたフラッシュ放流は、10年越しで提案し続けてようやく実現したそうです。また放流パターンは、きめ細かいシミュレーションを繰り返し実施して決められました。2012年に放流実験が開始され、現在はケショウヤナギの幼木が定着するようになりました。
 目標設定と実施手法の双方の緻密さが、札内川のフラッシュ放流を成功させたと言えるでしょう。セミナーには20名を超える参加者があり、講演後は活発な質疑が行われました。




2016/11/12

矢作川クリーン活動に参加しました

澄みわたった秋晴れの空の下、矢作川クリーン活動が行われました。この日は、今年度数回実施されてきた久澄橋下流右岸の竹林伐採と、ゴミ拾いが同時に実施され、トヨタ自動車株式会社Mid-size Vehicle Company の方々を中心に、約640名もの方々が集まりました。活動の前には、いつも通り研究所から、竹林伐採が川辺の生態系改善とヒートアイランド現象の緩和につながることを説明した後、川から流れ出したゴミが三河湾沿岸に流れ着き、子どもたちがゴミ拾い活動を続けていることを紹介して、ゴミを減らすことや持ち帰ること、環境学習やクリーンアップ活動への参加を呼びかけました。


以下が国交省豊橋河川事務所のレポートです。


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2016/11/09

職場体験の中学生を岩本川見学にお連れしました

豊田市矢作川研究所には毎年幾人もの中学生が職場体験にきてくれます。

11月9日は美里中学校と猿投台中学校からお1人ずつ、
生徒さんがいらしていました。

そのお二人を岩本川にお連れしました。
「岩本川創遊会」の活動をぜひご紹介したかったのです。

まずは岩本川の最下流、矢作川との合流部へ。
広々した眺めと百々(どうど)貯木場を見てから上流へと足を進めます。



7月に「川づくり体験会」、8月に「岩本川探検隊」を行った岩本川。
水は常に流れており、例年のごとく台風もありました。はてさて、どんなふうに変わっているかでしょうか…?


川に降りやすいように石を置いた、仮設の足場です。「川づくり体験会」では子ども達も石の間に砂を一生懸命入れていましたが、砂が流された部分の石がグラグラしていました。
中学生は「砂を入れたほうがいいですね」と意見を出してくれました。


そして魚道です。石で囲んで作った、水を湛える「プール」の数が減っています。石が崩れて流されてしまったのですね。運ぶのに苦労した重い石も、増水すると軽々と動いてしまうことがよくわかります。魚がちょっと上り下りしにくくなってしまったと思います。またみんなで相談してよい方法を考えなくちゃ!この試行錯誤こそ、「川づくり」の“肝”ですね。

そんなことをお話しながらの現地見学。
中学生のお二人は話を熱心に聞き、意見を述べてくれました。



2016/10/26

ニホンミツバチの採蜜会を開催しました

豊田市矢作川研究所は、水辺愛護会の活性化に向けた取り組みの一つとして「養蜂」に着目し、中部日本みつばちの会にご指導いただいてニホンミツバチを飼育しています。昨年は研究所の屋上に巣箱を置いていましたが、今年は扶桑町の古鼡水辺公園の近くに巣箱を移し、古鼡水辺公園愛護会のみなさんとともに養蜂にチャレンジしました。

秋には雨の日が続いたものの、無事に採蜜会を行うことができました。
採蜜会には古鼡水辺公園愛護会の方々だけでなく、平井こども園の園児たちもお招きしました。メッシュを貼ったテントの中に巣箱を入れて採蜜作業を行い、テントの外からその様子を見ていただきました。園児たちは巣箱から出てきたたくさんのハチに驚いていましたが、ハチミツを湛えた巣を巣箱から切り出すと歓声をあげていました。



巣を切り分けて行った試食では、喜んでおいしそうに食べる子や花粉のにおいを気にして食べない子など、採れたて新鮮なハチミツならではの様々な反応がありました。今年は巣箱の設置が遅れたことや秋に雨の日が続いたこともありハチミツの量が少なかったものの、愛護会の方々にも味わっていただくことができ、盛況のうちに採蜜会を終えることができました。



今後は巣箱の数を増やしながら、より多くの愛護会とともにニホンミツバチの養蜂にチャレンジしていきたいと考えています。(浜崎健児)



2016/10/07

逢妻女川と逢妻男川でミシシッピアカミミガメの捕獲調査を行いました

ミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメと記す)は、1950年代から「ミドリガメ」として販売されており、飼育されている方も多いと思います。実はこのカメ、アメリカ中南部が原産で、もともと日本にはいなかった外来種なんです。環境省によると、野外に逃げ出して定着したアカミミガメが全国に約800万匹もいると推定されています。

アカミミガメは、食欲旺盛で池の水草を食べ尽くしたり、在来のニホンイシガメの生息場所を奪ったりすることが分かってきており、在来の生態系に悪い影響を及ぼすことが心配されています。環境省はこの問題の解決に向けて、2016年より「アカミミガメ対策推進プロジェクト」を開始しました。豊田市矢作川研究所はこのプロジェクトに加わり、豊田市内の逢妻女川と逢妻男川において、自治体(官)・専門家(学)・市民(民)の共働によるアカミミガメの防除体制づくりに取り組んでいます。

今年は、市民ボランティア団体である逢妻女川の「逢妻女川を考える会」と逢妻男川の「初音川ビオトープ愛護会」にご協力いただき、愛知学泉大学の矢部研究室とともに、逢妻女川と逢妻男川のそれぞれ約2kmの区間で試行的に捕獲調査を行いました。10月7日~9日の3日間、それぞれの区間の9~10ヵ所に魚の頭を餌とする籠わなを仕掛けてカメを捕獲しました。

調査には、逢妻女川と逢妻男川で合わせて16名の地域住民の方々にご参加いただき、籠わなの設置やカメの回収、餌の補給などの作業を共働で行いました。これにより、アカミミガメ148個体、ニホンスッポン30個体、ニホンイシガメ14個体、クサガメ1個体を捕獲することができました。ニホンイシガメなどの在来種の生息が確認されたものの、捕獲したカメの77%はアカミミガメという結果になり、豊田市でもアカミミガメが増殖している実態が明らかになりました。

今後は、広域での一斉防除に向けて、アカミミガメ防除の必要性や具体的な作業の内容について流域の自治区ごとに説明会を行い、民・官・学の共働による防除体制づくりを進めることにしています。(浜崎健児)



                逢妻男川での調査の様子