矢作川研究所日記

2019/12/08

大河原水辺愛護会が活動のこれからを考えました

 大河原水辺愛護会で二回目の管理・活動計画作成ワークショップが行われました。
 ワークショップは、研究所の呼びかけにより、愛護会の会員の皆さんが集まって活動をふりかえり、今後の将来像を描くものです。活動の「これまで」をふりかえった第一回を踏まえて、この日は将来像について話し合いました。
 大河原水辺愛護会の課題となっているのは活動地の活用です。竹を伐り、草を刈って、広い空地はできていますが、利用はあまりされていない状況です。そこで、地域のみなさんが川の眺めを楽しめる、安心して歩ける道を作ろうという方針が固まりました。
 一方、会員自身の仕事や、畑、田んぼの世話もしながらの愛護活動は負担となっている一面もあります。愛護会の継続についても話し合われ、今はこの活動が地域の人々をつなぐ一つの機会となっているので活動頻度や活動面積を見直しながら、今しばらくは続けていこうということになりました。ただ、人口減少や高齢化が想定されるなかで、活動の意義をその時々で考えて判断していこうということになりました。
 研究所からは、活動地に生えている「ケケンポナシ」の木(枝の一部が食べられる)や、豊富な山菜の活用を提案しました。
今年度末までに、これらの意見を集約した計画ができあがる予定です。
(一枚目の写真はワークショップ当日、2枚目の写真は11月、3枚目は10月撮影)






2019/11/22

矢作川研究所セミナー「美しい秋吉台を守ろう! ~秋吉台の採草地再生と外来種防除~」

 今回のセミナーは、山口県から太田陽子先生(美祢市立秋吉台科学博物館・秋吉台草原ふれあいプロジェクト)をお招きして、草地管理をテーマに講演をしていただきました。



 日本有数のカルスト台地、秋吉台には約11.4㎢の草原が広がっており、採草地として利用されてきました。草原は山焼きや採草によって維持されてきましたが、現在は草原の草を使う農家が激減し、草原の面積は大幅に減少しているそうです。
 「秋吉台草原ふれあいプロジェクト」では、人の営みと共存してきた多様な生きものがすむ良好な草原環境を守るため、また、地元の技術や知恵を受け継ぐ機会を作るため、草を使う伝統的な農業を支援しながら、採草地の再生に取り組んでいるとのことです。



 農家はもちろん、ボランティアや体験活動の人々が、3月から5月を除き、草刈りを行います。刈った草は畑に敷く資材や牛の飼料および寝床として利用します。畑に敷いたり積み上げたりした草は、有用な菌が増え、よい肥料になるそうです。
 草刈りの際、「草刈りに弱い花が生える場所では草を刈らない、草の高さが低い草原は刈らない、地面近くまで刈り込まない、刈った草は草原の外へ持ち出す」という方法によって「野草のお花畑」を出現させる「お花畑プロジェクト」も行われています。この方法を基本に、草刈りの時期や頻度を変えることで、咲く花の種類や数が、草を刈らない場所よりも増えるという調査結果が出ています。
 また、外来植物が増えてしまったエリアでは、在来植物の草原を再生する活動を行っています。以前栗園として使われていた場所では、施肥によって土壌に栄養分が蓄積され、セイタカアワダチソウが繁茂していましたが、それらを刈り取って持ち出すことで土壌の化学性が変化し、セイタカアワダチソウの生育に不利な土壌環境に変わっていきました。開始から12年目の現在、セイタカアワダチソウは減少し、在来の草原性植物は増加しているそうです。
 人が利用することで維持されている秋吉台の「二次的な自然」の現在の姿は、豊田市の「水辺愛護会」が行っている河畔林の草刈りに参考になるものでした。今後水辺愛護会の皆さんにこの情報をお知らせし、活動に盛り込んで頂ければと思っています。

※講演内容の詳細は、「秋吉台草原ふれあいプロジェクト」のウェブサイトで紹介されています(リンク)。
年度報告書の概要版もダウンロードできます(リンクの下方より)。



2019/11/13

大洞市有林で林分調査を行いました

手入れ不足で過密な状態の人工林を間伐すると、森の土が水を蓄える「緑のダム機能」が上がったり、土砂崩れの危険性が下がったりするのでしょうか? こうした研究は各地で行われていますが、豊田市は岐阜県との県境に近い市内小原地区の大洞市有林で、2016年度より、間伐の効果を調べるモニタリング調査を行っています。渓流の流量や土砂、表面流の流出量の調査は東京大学が委託を受けて実施しており、植栽木や林内の明るさ、林内の植物の変化を矢作川研究所が調べています。実験区では昨年度から今年度にかけて、順次間伐が実施されています。

この日は研究員の洲崎が森林課の西川さんにお手伝いして頂き、土砂流出量の実験区で間伐前の林分調査を行いました。傾斜角28°とかなり急勾配で、足場を慎重に確保しながらの作業になりました。
植栽木の密度は1ヘクタールあたり約1800本と、かなり過密な状態であることが分かりました。過密で林内が暗いため、この日の前に調べた林内の植物は、被覆率が平均5%、種数も平均5種ときわめて少ない状態でした。
この実験区では今年度内に間伐が実施されますので、その2年後と5年後に同様の調査を行い、間伐によって林内が明るくなり、林内の植物が回復していく過程を追跡して、流量等の変化と重ね合わせていければと思っています。


林分調査のようす(2018年10月撮影)


            昨年度間伐を行った実験区(表面流観測地点)



2019/10/01

秋の岩本川で川学習

ふるさとの川づくり事業を行っている岩本川で、今年も平井小学校の2年生と1年生が川学習を行いました(10月1日および2日)。地元の川づくり団体「岩本川創遊会」と研究所が講師としてお招きを受けました。
岩本川は、水際にはミゾソバの小さな花が咲き、子どもの背丈を超えるほどジュズダマが茂り、土手にはヒガンバナが咲く、秋の風景でした。




今回の学習は、2年生が考えた、川の「生き物の捕まえ方」「遊び方」「安全」を1年生に伝えるというテーマで、2年生は9月20日に岩本川でお試しをした上での実施です。
子どもたちは魚釣りや水切り、水族館づくり(土砂で水槽をつくり、アメリカザリガニや魚を入れる)、カエルの催眠術(カエルを仰向かせ、腹を指でなでるとなぜか硬直する)などで遊んでいました。植物の葉を利用して笹舟を作る子、ジュズダマの実をポケットに入れて持ち帰る子もいました。








教室にもどって、研究員が、捕れた生き物の解説や、岩本川創遊会の活動によって遊べる川が維持されていることなどを伝えました。子どもたちは興味深そうに聞いてくれていました。




2019/09/15

百々水辺愛護会と「管理・活動計画図」ワークショップを開催しました

 矢作川の河畔林整備を行っている百々水辺愛護会と、矢作川研究所で、これまでの愛護活動をふりかえり、今後の将来像を描くワークショップを行いました。朝6時からの草刈り、竹伐りの活動後、現地での開催でした。
 第一回のこの日は、活動の「過去」と「現在」がテーマです。まず、竹で覆われて通りにくかった川辺の散策路整備を目的に始まり、今年で16年になる活動のこれまでを航空写真を見ながらふりかえりました。
 次に、現在の成果と課題を出し合いました。成果としては、散策路を維持し、矢作川の景観を確保してきたこと、課題としては、散策路が地域の人にあまり知られていないこと、などが出されました。散策路が知られていないことについては、地域で行われているウォーキングイベントにこの散策路を取り込んでもらったらどうか、などのアイデアが出ました。
 次回は活動の目標を立てて活動地の将来図を描き、その後、それらを「管理・活動計画図」としてまとめる予定です。