矢作川研究所日記

2020/08/16

「ふるさとの川づくり」第二の川として、広沢川で活動が始まりました


 人があまり寄りつかなくなった小川を、地元住民と行政の共働によって、自然豊かな親しみやすい川に再生していく「ふるさとの川づくり事業」。これまで岩本川を舞台に展開してきましたが、第二の川として、猿投町を流れる広沢川でも行うことになりました。手を挙げてくださったのは猿投町まちづくり協議会の皆さんです。



 広沢川は2003(平成15)年から河川改修工事が行われ、2008(平成20)年度から協議会の皆さんが川辺の草刈りを続けてこられましたが、さらによりよい川づくりを目指すことになりました。

 この夏、まずは広沢川を探検しようと自治区との共催でまちづくり協議会が地域の親子を募集しましたが、残念ながらコロナの感染拡大の恐れから中止となり、代わりに広沢川の様子を調べて紹介する「かわら版」を作って地域の皆さんに配布することにしました。まちづくり協議会の皆さんは前の週に草を刈り、前日にはテントを張ってご準備くださいました。

 8月16日、まちづくり協議会の皆さんと研究所員が広沢川に入って川の様子を体感し、生き物を捕まえました。川辺の整備はしていても、川の中に入ることはなかったというまちづくり協議会の皆さんでしたが、青空の下、楽しそうにガサガサをしておられました。





 ガサガサの後は生き物を水槽やバットに移し、研究員が解説を行いました。採れた魚はホトケドジョウ、カワヨシノボリ、カワムツ。川の上流に生息するタイプの魚で、これらは平成14年に研究所が行った調査と同様の結果となりました。他に、サワガニやヤゴなどの生き物も採れました。 



 協議会の皆さんは「意外と深いところがあるね」「今年はいつもより水量が多いな」、「結構生き物がおるもんだねえ」「もうちょっと魚が大きいといいね」「時期をもう少し後にずらせば大きくなるよ」、などと会話も弾んでいました。

 今後は広沢川にまつわる記憶や写真を地域の方に提供していただき、共有したうえで、未来の広沢川の姿を描いていきたいと思っています。




2020/07/29

講師派遣も密を避けて


愛知県の高校生環境学習推進事業「あいちの未来クリエイト部」から講師派遣の依頼を受けて、今年度この事業に採択された豊田高等学校で魚類調査のお話しをしてきました。
写真のように、隣の人と距離を空けて、マスクを着用し、窓を開けて・・・
対面形式での講演という条件下で、高校のほうでも考えられる対策を行ってくださっていました。
ひと昔前なら違和感のある光景だったかもしれませんが、現在では見慣れた光景になってきました。

この日は前日の雨で川が増水していたため、予定していた川での現地指導ができませんでした。
しかし、コロナ対応として矢作川研究所がちょうど作成中だった「(仮)ガサガサ紹介ビデオ」で、胴長の履き方やタモ網の使い方を紹介しました。
こうした内容は、実際に体験しないと理解してもらえないと思い込んでいましたが、
ビデオのおかげで調査の方法について具体的にイメージしてもらえたようでした。

この件とは別に講師派遣依頼を受けている学校では、
夏の暑い時期に行う授業に向けて、先生たちが川を歩いたり、魚を捕ったりする様子を事前にビデオに収めておいて、それを校内で子どもたちに見てもらい、身近な川について学んでもらうことを考えている所もあります。

コロナ、熱中症、水難事故など、様々なことに気を付ける必要がある中で、
川の学習をどのように行っていけるのか考える機会となりました。



2020/07/28

稚アユ遡上数は昨年の2倍を超えました


明治用水頭首工における遡上調査が6月末で終了しました。調査は2〜4日に1回の頻度で実施したので、調査を実施していない日はその前後の値の平均値で補完して集計した結果、のべ110万尾のアユが遡上したと推定されました。過去10年の中では6番目の遡上数ですが、昨年(45万尾)と比べると2倍以上の遡上数となりました。



アユがいると鳥も集まる


明治用水頭首工の約10km上流にある越戸ダム魚道でも同様の方法で調査をおこなった結果、6月下旬までの間でのべ25万尾の遡上を観測しました。明治用水頭首工で遡上したアユの数の約23%が越戸ダムを遡上したことになります。

昨年は遡上数が少なかったこともあり、中流で調べたアユの生息密度が大変に低かったのですが、今年は多くのアユの泳ぐ姿が見られることを期待しています。


左岸側では耐震工事が実施


増水が続く矢作川中流(源氏の瀬付近)



2020/06/22

セイヨウミツバチの引っ越しを行いました

 現在、百々町内では「百々水辺愛護会」によるニホンミツバチの養蜂が行われています。これは、矢作川の河川敷で草刈り・竹伐りなどの活動をしている水辺愛護会の活性化に向けた取り組みの一つで、矢作川研究所が支援を行っています。
 養蜂を始めて4年目となる今年は、アカリンダニ(ニホンミツバチの気管内で増殖し害を及ぼす寄生性のダニ)の蔓延によってニホンミツバチの勢いが落ちてしまい、4つある巣箱のうち1つは、いつの間にかセイヨウミツバチに入れ替わっていました(ニホンミツバチとセイヨウミツバチの違いなどについては、季刊誌RIOの2018年4月号(No.207)をご参照ください)。セイヨウミツバチはニホンミツバチよりも一回り大きく、活動する範囲も広いことから、ニホンミツバチへの影響を考慮して、平戸橋近くでセイヨウミツバチの養蜂を行っている方に引き取っていただくことになりました。
 朝6時、働きバチの活動が活発になる前に作業を行いました。当初、新しい巣箱に移し替えて運び出す予定でしたが、予想よりも働きバチの数が多かったため、そのままの状態で巣箱ごと移動することになりました。ハチが出入りする巣門を閉じた後、運搬用の担架に乗せて軽トラックに積み込み、無事に運び出すことができました(写真1)。


写真1 運び出した重箱式巣箱(トラック荷台の左側に見えるのは巣枠式巣箱)


 後日、引き取られた先で巣枠式巣箱への引っ越しが行われました(写真2)。重箱を一つずつ外しながら中に作られた巣を切り出し、新しい箱の上に並べてハチを移動させたそうです。無事に定着してハチミツをたくさん集めてくれるのか、今後の成長が楽しみです。(浜崎健児)


写真2 切り出した巣から新しい巣箱に移動したミツバチたち



2020/05/27

ソジバ(阿摺ダム下流)調査

ニホンカワトンボ


 
 阿摺ダム下流(ソジバ)では川底が固く動かなくなり,アユが嫌うゴワゴワしたコケ植物が生え、アユがほとんど釣れなくなりました。このため、2017年、2018年に矢作ダム湖から掘り出して乾燥させた礫を頂き、ソジバに敷いて実験区を作りました。今年もアユやアユの餌となる付着藻類、コケ植物などのモニタリング調査を開始しました。この日は水温17℃を超え、河川調査が心地良いお天気でした。


川底の様子


コケ植物や糸状緑藻が石を覆っています


 
 2017年に礫を敷いた実験区では、2018年までほとんどコケ植物が見られませんでしたが、2019年春頃から元の川底に生えていたコケ植物が侵入し、敷いた礫の上にも生育し始めました。この日の調査では水面からも黒っぽく見える礫があちらこちらに見られ、コケ植物が一段と拡がっていることが確認されました。




 
 コケ植物が川底を覆う割合を確認するため、調査者は水中マスクを付け川底をのぞくのですが,岩と間違えたのか、その背中にはホンサナエが止まり、しばらくそのまま張り付いていました。




 
 川岸のツルヨシにはニホンカワトンボやオオシマトビケラが羽を休め、川の中では羽化間近のコオニヤンマやコヤマトンボも見られました。そして、アユの姿やハミアトも少しですが確認でき、今年こそはたくさんのアユがソジバに遡上してくれることを願うばかりです。