矢作川研究所日記

2021/02/12

ミシシッピアカミミガメの産卵場所を掘ってみました。

 2020年6月、初音川ビオトープの一角で産卵中のミシシッピアカミミガメ(以下「アカミミガメ」)が確認されました(写真1、初音川ビオトープ愛護会 萩野鎭夫会長 撮影)。アカミミガメは春~初夏にかけて、土に穴を掘って産卵します。ニホンイシガメやスッポンなどとは異なり、ふ化しても子ガメはそのまま土の中で冬を過ごし、翌春になってから出てくることが知られています。そこで、土の中から出てくる前に産卵巣(さんらんそう、メスが産卵のために掘った穴と産み落とされた卵)の様子を観察するため、2021年2月に掘り起こしを行いました。


写真1 産卵するアカミミガメ


 産卵場所は植栽された樹木の根元付近で、よく見てもどこに産卵したのか分からない状況でした。産卵時に撮影された写真を頼りに少しずつ掘り進めると、表層から約6cmの深さに産卵巣があり、その中で重なってじっとしている子ガメを見つけました(写真2)。子ガメは全部で9個体、1個の卵は死んでいました(写真3)。子ガメの大きさ(甲羅の背面の長さ)は27.7~33.7mm、重さは4.2~7.5gで、最も小さな子ガメの鼻先には卵歯(らんし、卵の殻を割るための突起)が確認できました(写真4)。


写真2 産卵巣内の様子


写真3 掘り出した子ガメ


写真4 子ガメの鼻先にある卵歯


 アカミミガメは北アメリカ原産の外来種で、日本の生態系や農業に悪影響を及ぼす可能性が高いことから「緊急対策外来種」に指定されています。無責任な飼い主や業者が野外に放したことで、全国各地で増殖し分布域が広がっています。今回、産卵された卵のほとんどは孵化していました。ビオトープや近隣の河川・ため池ではたくさんの親ガメが確認されていることから、市内でも急激に増殖している可能性が高いと考えられます。
 野外に生息するアカミミガメには何の罪もありません。しかし、在来の生態系を守るために、豊田市ではアカミミガメの防除を行っています(詳細はこちらをご覧ください)。子ガメは小さく可愛らしいですが、成長すると20cm以上になり寿命も30年前後と長生きです。防除しなければならないかわいそうなアカミミガメたちを増やさないために、飼育する場合は最後まで責任を持って飼い続けるようにしましょう。(浜崎健児)



2021/01/29

オンライン打合せも新しい日常に


 この写真のように「パソコン画面に向かって、一人でしゃべっている」という状態は、およそ1年前には物珍しい光景に感じていました。
 しかし、最近では誰かしらがオンラインで打合せをしたり会議に参加したりしており、新しい日常の様相を呈しています。

 この写真を撮影したのは、外部専門家も交えた研究報告を行っているときなのですが、後日ほかの人にも見てもらえるように、その様子をパソコン上で録画しています。そのため、少し大げさに相づちを打ったり、デスクライトを自分に向かって点灯したりして、表情が暗くならないように気を付けています。

 オンラインでは画面越し、オフラインの日常ではマスク越し、と顔を合わせていても、なかなかお互いに表情が見えない状況だからこそ、少しでも明るい気持ちでいられるように心掛けたいです。(山本大輔)



2020/12/17

広沢川ふるさとの川づくりワークショップ「川の思い出を語ろう!」を行いました。

 今年度からふるさとの川づくり事業が始まっている猿投町で、広沢川についての昔の思い出を語りあうワークショップを行いました。事業を研究所と共に進めている「猿投町まちづくり協議会」の呼びかけで13人がご参加くださいました。



 まず、地域の方々から寄せられた昔の地図や写真を見ました。広沢川と籠川との合流点が今より下流であったことや、この地域の生業であった石粉の製造や、米をつくために用いられていた水車の様子などがわかりました。
 研究所からは、約20年前に行われた広沢川の調査の際に川を写した写真や、当時70代、80代の方にお聞きした、川と暮らしにまつわるお話をご紹介しました。

 休憩・換気を挟んで、後半は、参加された方々の川の思い出を付箋に書き、大きな地図や航空写真上に貼っていきました。水車がある風景や、水をせき止めて水遊びをしたこと、魚を捕りに友達と上流や下流へ行ったこと、ウナギがとれたことなどが話題になりました。地域の皆さんが広沢川と深いつながりがあったことがよく分かる時間でした。

 集まった情報を猿投町の皆さんにお知らせするため、現在まとめ作業をしています。来年度は、川の未来を皆さんと一緒に描いていきます。





2020/12/03

ドローンでオオカナダモ分布状況を確認しました



毎年、晩秋から初冬にかけて行っている平戸橋下流から久澄橋までの外来生物オオカナダモの分布調査も今年で10年目を迎えました。

矢作川漁協の方々のアユ釣り船に乗せていただき船上からオオカナダモを目視して分布状況を把握していたのですが、船頭さんの高齢化が進み、2018年からはドローンを飛ばして、上空から撮影した動画を見ながら分布を確認する方法も併用しています。




写真のように、水位も低く水が澄んでいるので、上空からもオオカナダモの群落がはっきりと分かります。


今年は昨年に引き続き繁茂面積は狭く、特に籠川合流点より下流ではこの10年で最も狭い面積となりました。また、平井公園の前あたりも以前に比べ、面積が大きく減少しました。



一方、平戸大橋を挟んで上下流の右岸側は減少はしているものの、依然として面的な繁茂が見られました。





カモ類はドローンが迫ってくると慌てて飛び立ったり、水に潜ったりと、驚かせてしまいます。
あちらこちらで見かけたコイは、水面が波立つほどの高さで飛んでも悠々と泳いでいました。




2020/11/28

ヤブツバキの搾油体験会を行いました

 ヤブツバキは矢作川の河畔に多い樹木で、種子からは椿油を取ることができます
(矢作川の生き物 ヤブツバキ)。矢作川研究所は、矢作川の河川敷で草刈りや竹伐り、ごみ拾いなどの活動をしている水辺愛護会の活性化に向けた支援を行っており、活動の楽しみになる川辺の生物資源としての椿油の可能性に着目しています。

 今年の2月に研究所で、百々水辺愛護会の今井菊平会長と下越戸水辺愛護会の白鳥満夫さんにお越し頂き、河畔で採取したヤブツバキの実を搾る体験をして頂きました。白鳥さんが搾った椿油を自治区の方に見せたところ、女性の方々が興味を示され、下越戸児童館で搾油体験会を開催する運びとなりました。講師には椿油の生産やワークショップを手がけている松原孝史さんをお招きし、下越戸水辺愛護会の会員と地域住民あわせて7人が参加しました(松原さん)。



 参加者の皆さんは事前に集まって種子を採取し、各自持ち帰って天日干ししていました。その種子を重い棒で砕いて殻をとり、ミキサーにかけ、さらしの袋に入れて松原さんお手製の搾油機で搾りました。殻をとるのは時間がかかりますが、おしゃべりをしながらの楽しそうな作業でした。搾油は強い圧力が必要なため、搾油器を支える人、バーを回して圧力をかける人が協力して行いました。圧搾されてゆっくり染み出してきた、うっすら黄色い油をスポイトで吸って容器に移しました。2時間ほどで25mlの容器7本分の油が搾れました。




 この体験会に参加して、身近に自然の恵みがあることに気付いた、初めての体験でワクワクした、手搾りでできるなんてすごい、との声も聞かれました。その夜さっそく椿油をお肌の手入れに使った方もいたそうです。

 古くから美容に用いられてきた椿油は、これまで水辺愛護活動への参加が少なかった女性が川辺に関心を持つきっかけになったようです。今後も河畔の自然と水辺愛護活動について広報するツールとして、ヤブツバキの活用を進めていければと思います。