矢作川研究所日記

2021/06/28

糸状緑藻の流程分布調査

 地元でアオンドロと呼ばれている糸状藻類の流程分布調査を6月28日から3日間連続で行いました(写真上・中)。矢作川の流れに沿って小渡、富田、広瀬、古鼡、豊田大橋の5箇所で調査しました。糸状藻類が最も多く生えていた場所は、富田と古鼡でした。極めて多く発生すると、川底全面を覆うまでになりますが、今年はそこに達しない状況でした。
 広瀬ではアユの友釣りが解禁になっていましたが、釣人の姿はみられません。しかし、瀬の水しぶきの音がする中、岸辺のヨシ原では、無数のオオシマトビケラが羽を休めていました(写真下)。侵入者である私に驚いたのか、顔や体にバシバシと体当たりしてきます。水面では、羽化したての水生昆虫を求めてツバメたちが低空飛翔し、あっという間に上空に舞い上がっていきます。ツバメのアクロバット飛行は一見の価値があります。初夏の矢作川は生物たちで賑わっていました。(内田朝子)






2021/05/15

古鼡水辺公園愛護会の「管理・活動計画」が完成しました。

 昨年10月の「研究所日記」で経過をご紹介したように、昨年度は河畔林の整備団体「水辺愛護会」の一つ、古鼡(ふっそ)水辺公園愛護会と研究所でワークショップを行い、「管理・活動計画」を作成しました。「管理・活動計画」とは、水辺愛護会の活動地の自然や川辺の恵み、愛護会の現状に即して、活動地をどんな場所にしたいか、どう使いたいかを整理し、これからの管理方法や活動の仕方などをまとめたものです。
 この地域は、かつて川が生業や暮らしと密接に結びついていました。そこで、活動テーマは「歴史ある川辺を子どもたちに伝える」になりました。また、現在、短く草を刈りこんでいるエリアは、今後は花が咲き、虫が来るような草丈のある草原とする、木が生長して少し暗くなっている広場や、堤防の法面などは、茂りすぎた木の下枝を払う、などの管理方針を立てました。下枝を伐ることについては即座に実施されました。



 5月に入り、資料として完成した「管理・活動計画」を持参して、会員の皆さんにお会いし、改めて内容を確認しました。今後も共働で、あるべき川の姿を考えていくことになっています。
 「管理・活動計画」は今年度も1団体で作成を予定しています。




2021/04/11

百々水辺愛護会活動地で植物観察会

 当研究所は、市民による水辺愛護会活動の活性化に向けたさまざまな支援を行っています。百々水辺愛護会では愛護活動活性化のツールとして2017年度からニホンミツバチの養蜂を行っており、研究所はそのお手伝いも行っています。その一環として、活動地に蜜源植物や有用植物、特徴的な植物があることを知っていただこうと、愛護活動の後に植物観察会を開催しました。2年前に同様の観察会を行ったときよりはるかに多い10人ほどの会員さんが参加してくださいました。




 まずは、活動地入口の広場に咲く花々のご紹介をしました。在来種のトウカイタンポポが多いことや、ホトケノザ、クサイチゴ、キランソウなどについてお話ししました。会員さんたちからは「こんなにいろいろな花があったんだな」「全部刈ってしまっていたな」との声が聞かれました。



       ウラシマソウの花


 愛護会の皆さんは、矢作川中流の明るい竹林内に見られるウラシマソウの名前の由来である花の形を観察したり、ヤブカンゾウが山菜であることやオニグルミの実が食用や油の原料になることを学んだり、上流に生えているタラヨウの葉に文字を書いてみたりしながら、春の日差しの下で植物観察を楽しみました。「年間を通じて活動地にどんな花が咲いているか分かる資料を作って欲しい」との声も上がりました。活動地の植物やその利用について、会員の皆さんの関心が深まってきたという手応えを感じることができました。(洲崎燈子)



2021/04/09

明治用水頭首工でアユの初遡上

ピントがずれていますが稚アユです

例年よりも1週間近く早かった今年の桜の開花ですが、明治用水頭首工でのアユの遡上も昨年より早く始まりました。3月29日から頭首工魚道で遡上の有無を確認していたところ、最高気温が23℃を超えた4月2日に初めて遡上を確認できました。昨年が4月7日に初遡上を観測したので、5日早い初観測となります。サイズは5〜10cmとこの時期にしてはやや小ぶりでしたが、元気よく魚道を遡上するアユの姿がみえました。水温も14℃台と昨年の同時期より4℃ほど高く、すでに遡上が本格化する4月下旬の水準に達しています。今年は遡上のピークも早まりそうです。


サギやカワウなどの鳥も集まってきました




2021/03/15

平戸橋周辺の自然資源の紹介

 猿投台地域でわくわく事業の助成を受けている「民芸の散歩道づくり」活動の報告会・セミナーが、猿投台交流館で行われました。
 この地域には平戸橋周辺の豊かな自然と歴史を活かした地域づくりをめざす「民芸の渓(たに)」構想があります。この構想はこの地に住み、電気通信事業と科学技術の向上に献身するとともに、陶磁器の研究に取り組み、猿投窯を発見した本多静雄氏の提案に基づいています。「民芸の散歩道づくり」活動はこの構想を踏まえ、平戸橋駅から前田公園に至る民芸の散歩道と、平戸橋公園から表州(ひょうす)水辺公園に至る矢作川散策路及びその周辺に、地域産の木材と竹材を使ったオリジナルのベンチをこれまで18基作成し、設置してきました。

 セミナーでは「平戸橋周辺の矢作川の自然資源」と題して報告を行いました。川辺の林、河畔林の機能と、矢作川中流のモデル的な河畔林として整備されたお釣土場水辺公園などの豊かな自然と生物を紹介し、この地域にある川港や伝統工法による護岸、流れ橋などの歴史的な痕跡についても触れました。この地域の河畔はかつては密生化した竹林に覆われていましたが、水辺愛護活動の活発化により近年劇的に景観が改善されています(Rio2020年4月号参照)。今後は人が利用しやすいだけでなく、多様な植物が生育できるような川辺づくりにつながる管理を、竹林と草地で行っていくことを提案しました。



 参加者からは、「竹や草を刈りすぎたり放置したりするのではなく、ほどよく管理することが植物の豊かさにつながるとわかり驚いた」「地域の河畔林にいろいろな植物がある事が分かったので、子どもも含め地元の皆さんと見て楽しみたい」などの声が上がりました。また、前年度行われた椿油搾り体験も話題に上り、植物利用の楽しみをきっかけに川への興味が広がる可能性についても言及されました。

 その後、以前研究所に在籍されていた枝下用水資料室の逵志保さんが「歴史・文化資源としての枝下用水」と題した報告で、枝下用水資料室開室までのあゆみや、愛知新十名所として賑わっていた頃の勘八峡の写真や資料、枝下用水がみんなのプールや生活用水だった頃のようすを紹介されました。越戸ダム上流の名鉄三河線の廃線区間で清掃活動が続けられ、廃線跡からでも枝下旧用水路を見ることができるようになったそうです。



 登壇者と参加者を交えた意見交換会では、広い猿投台地域のあちこちにベンチが置かれるようになったことで、ここが一つの地域であるという意識が培われるようになったことと、ベンチのある場所に多くの人が来るようになって、散策路整備のモチベーションが上がったとの発言がありました。この地域の川辺の豊かな自然と歴史の資源がさまざまな活動のアイディアをもたらし、地域を愛する人のつながりを強め、広げていることを実感できました。(洲崎燈子)