矢作川研究所日記

2024/06/25

第26回日本水大賞環境大臣賞を受賞しました


 令和6年6月18日に日本科学未来館において、第26回日本水大賞・2024日本ストックホルム青少年水大賞の表彰式、受賞活動発表会がありました。
 そこで、「地域に根差した「河川と流域」の研究所として30年」として、豊田市矢作川研究所が第26回水大賞環境大臣賞を受賞しました。

 豊田市矢作川研究所は1994年7月に設立され、今年で設立30周年を迎えます。
 30年という長きに渡り、地道な調査研究、啓発等の活動を続けることができ、このような栄えある賞を受賞できたのは、これまで関わってくださった皆さま方のおかげです。
 この場を借りて、深く御礼申し上げます。

 日本水大賞のホームページはこちらをクリック。



2024/06/11

ササノハガイからヒガイ類の卵が出てきました

 6月上旬、イシガイ科二枚貝の生息状況を調査するため、矢作川で採集したササノハガイを一時的に研究所に持ち帰りました(写真1)。殻長の測定や個体識別のためのマーキング作業を行っていたところ、ササノハガイから魚の卵が!(写真2)。出てきた卵の直径は4.2~4.7mmくらい。その大きさから、コイ科魚類に属するヒガイ類のものだと分かりました。卵は全部で8個、胚発生の初期段階や孵化間近のものが含まれていました。いくつかの卵は観察中にふ化したものの(動画)、残念ながら数時間で死んでしまいました。二枚貝から出て環境が急激に変化したために、まだ発育が進んでいない状態でふ化してしまったと考えられます。
 矢作川には、在来種である「カワヒガイ」と国内外来種である「ビワヒガイ」の2種が生息しています。ヒガイ類はタナゴ類と同様に二枚貝に産卵しますが、産み付ける場所が異なっており、タナゴ類は二枚貝の出水管から産卵管を挿入してエラの部分へ、ヒガイ類は入水管から産卵管を挿入して外套腔の部分(二枚貝が開いたときに見える空間)へ産み付けることが知られています(長田、2014)。ヒガイ類の卵は産み付けられると大きく膨らんで4.5mm前後に達することから、通常の状態では二枚貝の外套腔から外に出ることはないと思われます。今回はバットに入れたササノハガイが逃げ出そうと足を出してもがいていたために、卵が出てしまったようです。


写真1 矢作川で見つけたササノハガイ。

写真2 出てきた卵。様々な発育段階のものが含まれていた。


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動画 卵内で活発に動く仔魚の様子とふ化の瞬間。



 ササノハガイを含むイシガイ科二枚貝は、全国の河川で減少する傾向にあり、愛知県もその例外ではありません(愛知県、2020)。これらの幼生は魚類のエラやヒレに寄生しなければ成長できない時期があり(北村・内山、2020)、安定的に個体群を維持するためには、生息に適した物理環境と豊富な魚類の維持・保全が重要になります。
 今回の出来事で、矢作川のヒガイ類はササノハガイを利用してしっかりと子孫を残していることが確認できました。これからもヒガイ類が生息できる矢作川であるように、河川環境の維持・保全に向けた調査研究を進めていきたいと思います。(浜崎健児)

【参考文献】
愛知県(2020)レッドデータブックあいち2020:愛知県の絶滅のおそれのある野生動物.
 https://kankyojoho.pref.aichi.jp/rdb/index.html (2024年6月11日閲覧)
北村淳一・内山りゅう(2020)日本のタナゴ:生態・保全・文化と図鑑.山と渓谷社.
長田芳和(2014)淡水魚研究入門:水中のぞき見学.東海大学出版部.