矢作川研究所日記

2024/05/26

広沢川で川づくり勉強会をしました


 ふるさとの川づくり事業が進む広沢川で、猿投まちづくり協議会のみなさんと川づくり勉強会を行いました。久しぶりの開催となった今回は、浚渫後の水際に生えたツルヨシの抜き取りに挑戦です。
 まず、広沢川の未来希望図をもとにして、土砂の溜まりにくい川づくりを目指していること、こどもたちの遊び場や地域の憩いの場にしたいことなどの目標を改めて共有した上で、植生繁茂と土砂堆積について説明し、作業を行いました。水面と砂州に沿って伸びているツルヨシは抜き取りやすいのですが、石組みの間から伸びたものや既に川底の深いところに茎を伸ばしたものがもう抜けません。「大きなカブの話みたいだな」なんて声も聞こえますが、もはや素手ではどうにもなりません。「当日は長靴と軍手があれば良いですよ」とみなさんにお伝えした自分を責め始めたころ、ふと気づくと、レーキや熊手を持った人がいる。軽トラに色々載ってるんですね、助かりました。岩本川での川づくりの際も思いましたが、こちらの準備不足や見込み違いがあっても、一緒に活動してくれる地域のみなさんの知恵や持ち物、人脈等にいつも助けていただいてます。
 ふるさとの川づくり事業は、見試しやトライ&エラーが多い取組です。これからも川の変化を見ながら次はどうしようかということをみなさんと考えながら進めていきたいです。


作業前

作業後



2024/05/24

特定外来生物カワヒバリガイの広域調査

今年もカワヒバリガイ広域調査を愛知工業大学と共同で実施しました。矢作川の上流、黒田ダムの下流から米津橋までの間に15調査地点を約2日で駆け巡る調査です。今日は、五月晴れ気温30℃越えで、汗がにじみました。(内田)


平水より少し水位が高く、肩まで水中に浸かりながら川底の石に付着しているカワヒバリガイを探しました


地点までのアプローチは様々です。荒れ果てた休耕田の畦をひたすら歩き、川岸に出るまでひたすらやぶこぎという地点もあります。大変ですが、子ども頃にやった探検ごっこのような場面もある調査です。

やっと辿り着いた川岸、水際の石にアユのハミアトがびっしりついていました。今年の天然アユの遡上は多いと聞いていましたが、アユの元気な暮らしぶりも垣間見えました

採取したカワヒバリガイはアルコール標本にして持ち帰りました



2024/05/20

ダム工学会の表彰式に参加しました!

受賞後の記念撮影


このたび,ダム工学会から「石礫の露出高の簡易予測モデルを用いたダム下流の河床環境評価手法の開発」について,令和5年度技術開発賞をいただきました.土木研究所自然共生研究センター時代の研究成果に対するもので,矢作川水系で行った精度検証の研究成果も含まれています.

「簡易予測モデル」を開発した宮川幸雄さん(現:リバーフロント研究所)が代表受賞者であり,連名者としては私(小野田幸生)のほか,末吉正尚さん(現:国立環境研究所),堀田大貴さん(現:建設技術研究所),中村圭吾さん(現:土木研究所流域水環境研究グループ長)といった,当時の研究仲間などが名を連ねます(嬉しいお知らせを皆で共有しました!).

技術の詳細については,土木研究所自然共生研究センターのHP「ダム下流の環境評価ツール」をご参照下さい.なお,豊田市矢作川研究所の季刊誌Rio(No.226, 2023)では,露出高の特集を組んでおり,宮川さんには「簡易予測モデル」の紹介記事を書いてもらいました.改めて読んでいただければ幸いです.(小野田幸生)



2024/05/20

カタカイガラムシの仲間を見つけました

 5月中旬、研究所の敷地内に生えたヤツデの葉の裏に、扁平で不思議な形をした生きものを見つけました(写真1)。大きさは3~4mmくらい。一枚の葉にいくつか付着していました。葉の一部を切り取って実体顕微鏡で観察すると、体全体が葉裏に密着しており、動く気配はありません。ピンセットを使って体を裏返してみると、もぞもぞと動く3対の脚を確認できました(動画)。体の尾端が中央に向かって深く切れ込んでいるなどの特徴から、カメムシ目カタカイガラムシ科の仲間であることが分かりました。大きさと形態から雌成虫と分かりましたが、残念ながら種まで同定することは出来ませんでした。

 この時期は産卵期のようで、雌成虫の近くに孵化して間もない幼虫も確認できました(動画)。幼虫の大きさは約0.3mmと非常に小さいですが、1対の眼と触角や3対の脚が明瞭で、成虫に比べると昆虫らしい姿をしています。小さいながらもヒョコヒョコと歩き回る姿はとてもユーモラス。自由に動き回ることができるのは若齢幼虫の時期(「歩行幼虫」と呼ばれる)だけで、いい場所を見つけて定着するとほとんど移動しなくなるようです(写真2)。


写真1 雌成虫。体の前部上下にある黒い点は眼。右隅の丸いものは幼虫。


写真2 定着したと思われる幼虫。動画の歩行幼虫とは異なり、体が葉裏に密着している。


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動画 成虫を裏返した様子。後半に現れるのはふ化後間もないと思われる幼虫(歩行幼虫)。



 ヤツデの葉裏で見かけた雌成虫の中には、背中の一部が黒くなっている個体が含まれていました(写真3)。シャーレに入れて実体顕微鏡で観察していると、雌成虫の背中に丸い穴があき、中から小さな蜂が!(写真4)。カイガラムシには様々な種類の寄生蜂が報告されており(例えば立川、1957)、出てきたものは寄生蜂の一種と考えられますが、その正体は謎のままです。蜂が出てきた雌成虫は死んでしまいましたが、裏返すとおなかにはたくさんの卵と幼虫を抱えていました。寄生した蜂は最終的に雌成虫を殺してしまいますが、繁殖には影響を及ぼしておらず、そこにはなにやら複雑な関係が存在しているようです。


写真3 背中の一部が黒くなっている雌成虫。一番右の個体は背中に穴があいている。


写真4 穴から出てきた寄生蜂の一種。


 カイガラムシの仲間は国内で約400種が記録されており(河合、1980)、様々な植物で見ることができる身近な生きものです。見た目だけでなく生態もかなり不思議で、雌は他のカメムシ目と同様に蛹にならずに翅を持たない成虫になりますが、雄は蛹になって翅を持つ成虫になります。しかし、雄が見つかっていない種もたくさんいるようで、それぞれの種の繁殖生態は、害虫とされる種を除くとよく分かっていないのが現状です。まずは同定作業を進めながら、孵化した幼虫がどのように成長していくのか、寄生蜂との関係がどのようになっているのか、雄成虫は出現するのかなど、今後も観察を続けてみたいと思います。(浜崎健児)

【参考資料】
河合省三(1980)日本原色カイガラムシ図鑑.全国農村教育協会.
立川哲三郎(1957)日本産Coccophagus クロヤドリコバチ属(新称)とその寄主.日本応用動物昆虫学会誌.1(1):61-64.



2024/05/18

中越戸水辺愛護会の活動を住友ゴムが支援しました

 河畔の維持管理活動をしてくださっている水辺愛護会の多くが、会員数の減少や後継者不足の問題を抱えています。そんな中、外部ボランティアの力を借りて活動の活性化を図っている愛護会が複数おられます。中越戸水辺愛護会には年1回、住友ゴム名古屋工場(豊田市新生町)の皆さんが活動のお手伝いに訪れています。その様子を取材しました。

 当日は晴れわたった空の下、朝8時に住友ゴムの社員35名の方が集まり、愛護会がお釣土場水辺公園の上流側に設置したウッドデッキをベースに、公園下流側で愛護会員が伐採した竹や低木を運ぶ作業に汗を流しました。長い竹は3人がかりで運搬。運ばれた木竹は一箇所に集積され、愛護会員が運びやすい長さに玉切りしました。


竹の伐採


竹の運搬 


 住友ゴム名古屋工場は地域貢献活動として、年に豊田市内の10の市民活動団体に支援を行っています。中越戸水辺愛護活動への支援は、同社のOBだった愛護会長の森和夫さんの働きかけにより、2019年に始まりました。ボランティア活動に参加する社員の皆さんは、会長はじめ愛護会員の皆さんの人柄に触れ、交流するのを楽しんでおられました。
 また、一昨年の明治用水漏水事故の際には、工場も操業停止を余儀なくされ、あらためて矢作川がいかに重要な存在なのか認識し、川に恩返しできる活動に意義を感じるようになったとのお話もうかがいました。


センダンの木が満開でした


豚汁のふるまい


 この日は30℃近くまで気温が上がりました。活動は11時過ぎに終了し、おむすびと、愛護会の皆さんお手製の絶品の豚汁を頂いて閉会。愛護会員の飼い犬くんもおさまった最後の記念写真では、みなさんの笑顔と達成感の表情が印象的でした。(洲崎燈子)